親知らず


帰り道にチャットモンチーの『親知らず』を聴いて、泣いてしまった。

今日はそんな日だった。
こんな時ばかりは前髪が長くてよかったなと思った。普段は邪魔で仕方ないけれど。

そろそろ父の命日だ。

あれからもう一年が経つらしい。期間で言われたってよくわからないんだけれど、一日とか一週間とか一年とか分かるかたちになってくれるとなにか掴みやすいのかもしれない。

最初は上手く悲しめなくて、上手く泣けなくて、そのことが悲しくって。
少し経ってからしっかり悲しくて、しっかり泣いてしまって、そのことが少し嬉しかったりして。
もう少ししてから、上手く思い出せなくなって、思い出だとか記憶だとかが曖昧になってしまって、それが少し悲しかった。

もうすぐ一年経とうとしてるいまは、相変わらず思い出せないんだけれど、なんとなく毎日心が落ち着かなくてお父さんのことがちらつくんだ。ちらつくなんて悪い言い方しちゃったけれど。

相変わらず僕は自分のことばっかりで、周りのことを気にしてしまうのにそれに見合うだけの行動力を持ち合わせていないんだ。
お母さんのことだって心配なのにまだまだ甘えてばっかりで全然安心させてあげられないんだよ。
やりたいことがあるんだよ。道も見えないしゴールもあるのかわからないんだけど。親不孝だなぁって思うよ。
でも僕はどっかの誰かに似てしまってどうやら相当頑固なみたいだよ。全然諦められないんだ。
でも昔よりは胸を張って言えるようになったんだ。言ってるだけじゃあだめなんだけどね。相変わらず自分には甘いんだ。そこも少しは似てるのかな。

もうすぐ一年が経とうとしていて、一年前の自分がなりたかったようにはまだまだ程遠くて、なりたいようにはなれてないよ。
いままではそんな一年を繰り返してきたんだけど、これからはきっと違うから見ていてほしいんだ。
 いままではなんだか気恥ずかしくて言えなかったことも見せてなかったものも、いまなら全部できるのに。うじうじしてしまうのは悪いところだね。


たまに帰ればご馳走 もう子どもじゃないのにね
ああ だけどやっぱり あなたの子でよかった

家族写真は今もまだ 和やかに 色あせず
広くなった家の中 微笑んでいたのです

写真の中の2人の目がとても強いから
私がここにいる意味 わかった気がしたのだよ
この幸せがあなたの幸せであること
この悲しみがあなたの悲しみであること

大丈夫!写真はこれからも 和やかに 色あせず
ひとりで暮らす部屋の中 光を放っていくのです
私もいつかこんなふうに人を愛せるだろうか
幸せの意味を誰かとわかりあえるだろうか

親知らずが生えてきたよ 怖いから歯医者には行かない
親知らずが生えてきたよ 誰も知らない間に